寝台急行「昭和」行 関川夏央 NHK出版 2009年7月30日 第1刷発行 |
懐かしき「鉄道時代」への思い
日本近代化の「立役者」でもある鉄道への思いを、寝台列車やローカル線の旅、文学作品に描かれた鉄道を通して綴る「昭和懐旧」随想集。東京近郊から日本の鄙、さらに台湾、サハリン、スペイン、ペルーまで、「昭和」の残照を求めて旅する愉悦に、精緻なデータと成熟したユーモアを加味した「関川的鉄道記」。
さすがNHK出版の商品紹介、「日本の雛」「「「昭和」の残照を求めて旅する愉悦」など、他社のものとは違います。
鉄道ファンではなくても、その気持ち、わかるところもあります。ノスタルジーと重なるところが多そう。最新鉄道事情よりも、古い方が好まれます。
関川氏がカミングアウトしたとき、というのがありました。それまでは自分が鉄道ファンであることを隠したかったのだそうです。その理由がわからないでもないけれど、あるときから隠さなくなったといいます。それからは鉄道についても書くようになったとのこと。このあたり、関川さんが含羞の人といわれる所以でしょうか。
著者がしきりと繰り返す、宮脇俊三氏が言うところの「児戯」でしかない鉄道趣味を、ことさらあけっぴろげでさらしてしまっている世の「鉄」っちゃんたち。成熟を拒否した現代の大人。幼児化と言われて既に何年経ったことやら。
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