[NO.1259] 影の外に出る/日本、アメリカ、戦後の分岐点

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影の外に出る/日本、アメリカ、戦後の分岐点
片岡義男
NHK出版
2004年5月30日 第1刷発行

最初はこの著者とテディ片岡である片岡義男が同一人物だとは思えなかった。しかし、巻末の著者についての説明を読む限り同じだ。どうしてあの片岡氏がこんなタイトルの本を出さなければならなかったのか、理解できなかったのだ。内容はいたって正当な「日本、アメリカ、戦後の分岐点」について記したものだった。

読み出してすぐに驚いたのが、資料は一般紙(朝日新聞と日経)のみということ。ただし、そこから読み取る内容がおかしい。読み取るというよりも翻訳と呼んだ方がいい。同じ日本語から日本語への変換なのだが、片岡氏が言い換えると噴飯ものになる。恐ろしいことに内容はとても笑えないところが困るのだが。

たとえば

p11
こうして十月に入ってそのなかば、アメリカのベーカー駐日大使は、大統領の訪日をめぐって、外務大臣や防衛庁長官と会談した。その席で大使はイラクへの自衛隊の派遣について言及し、派遣は「日本の独自性、主体性、国益から判断されるべきことだ」と述べたという。早くしろ、という意味だと理解するのがいちばん正しい。会談のあと、取材の記者たちに対して、自衛隊派遣の問題を「日本がさらに検討することを期待する。首相と大統領とのあいだでも、この問題はかならず議論されることになるだろう」と語った。たいへん大事なことなのだから、早くしろと言ったら早くしろ、という意味だ。

さすが、翻訳には長けているだけあってわかりやすい。「早くしろと言ったら早くしろ」。

TVで池上彰がニュース解説をしている番組があるが、いっそのこと新聞記事を片岡義男が解説してくれたら、なんともわかりやすく面白いことだろう。

ご自分で経済紙記者といわれるように、経済面についての分析も多い。こうした文章を発表のあてもなく、それでも書かずにはいられなかったということが、本書ができた動機であるという。書くことになったきっかけは海外派兵について抱いた違和感だとのこと。