大正の名著/浪漫の光芒と彷徨 渡邊澄子 編 自由国民社 2009年9月20日 初版第1刷発行 |
出版社サイトに説明あり。pdfファイルにて目次と冒頭を読むことができます。
無料で読める冒頭部分は、夏目漱石「こころ・明暗」と阿部次郎「三太郎の日記」の二編。いかにも自由国民社の記事らしく、それぞれ要領よく手短にまとまった内容になっています。後者の文末に、筆者による意見が述べられていました。それがほかと違って、いつまでも残りました。
著者が本当に真面目な「内面生活」の記録だとしたいのならば「三太郎」などとふざけた名をつけるべきではなかったし、逆に、難解なことばを並べているようだが、こんなものは青二才のたわごとにすぎないという自嘲の方が正しいというのであれば、あまり深刻ぶった文字を列(つら)ねてほしくはなかった。
自由国民社のまとめ記事には異色の突っ込んだ内容です。「列(つら)ねてほしくはなかった」ですから。
『三太郎の日記』を読む者は、本書があくまでも著者の若書きであり、青春一時期の「彷徨」の記録にすぎないこと、人生は結局、このあとの決断をまたなければならぬということを知っておかなくてはならないと思う。
いやあ、人生の決断は、結局のところ、このあといつまでも続くものなのですよねえ。筆者はこれを読んだ若者が書かれた内容を真に受けて人生を惑わされてはいかんよ、と忠告しているみたい。
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後から気がついたのですが、本書はリメイク版でした。奥付の下にあった次の文が目をひきました。
本書は『明治・大正・昭和の名著・総解説』(1997年/自由国民社刊)をもとに新版編集したものです。一部の連絡未詳執筆関係につきましては編集部までご連絡いただけますようお願い申しあげます。
編著者として渡邊澄子 他27名共同執筆とあります。いったい、どなたが連絡未詳なのでしょうか。そちらの方が気になってしまいました。
浅原勝、安在邦夫、和泉あき、井出孫六、井原美好、浦西和彦、栄澤幸二、大井正、尾崎秀樹、小田切明徳、片岡懋、勝又浩、木村幸雄、清沢洋、国分一太郎、小林裕子、関川左木夫、関谷由美子、高橋春雄、中島佐和子、中村智子、西田りか、古林尚、松平康夫、松本健一、山野晴雄、渡邊澄子、渡辺千恵子
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