[NO.1199] 「今泉棚」とリブロの時代/出版人に聞く(1)

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「今泉棚」とリブロの時代/出版人に聞く(1)
今泉正光
論創社
2010年9月15日 初版第1刷印刷
2010年9月20日 初版第1刷発行

全編がインタビュー形式なので読みやすい。なによりも内容が面白いので、翌日に差し障りがでることがわかっていながら2時過ぎまでかけて読了。ニューアカなどという好ましからざる呼び名が登場した80年代、たしかに池袋西武内にあった書店は独特だった。分厚く重たくて枕のような『ゲーデル・エッシャー・バッハ』が1ヶ月で500部売れ、『アンチ・オイディプス』に至っては初日で300冊完売だったという。値段だって、ともに5000円弱はしていた。人文・思想書界のバブルとしか考えられない。浮かれるように買った人が多かったのではないか。まじめに通読した人には申し訳ないが。

その仕掛け人だったのが今泉正光氏。インタビュアーは小田光雄氏。

おやっと思ったのは冒頭にあった、今泉氏の浪人大学時代について。本書の面白さの理由のひとつは、今泉氏という人の魅力だろう。若いころに濫読した中で、特に強く影響を受けたとして3種類のシリーズを挙げている。これが面白かった。

具体的には、
『全集・現代文学の発見』(学芸書林、全16巻・別巻1、1967-1969年)
『現代人の思想』(平凡社、全22巻、1967-1969年)
『戦後日本思想大系』(筑摩書房、全16巻、1968-1974年)
の3種。巻末にはそれぞれシリーズ内の紹介も挙げられている。

それと、ああ、そんなこともあったな、と思ったこととして

p148
『アンチ・オイディプス』や『ゲーデル・エッシャー・バッハ』も大量に売った。でも本当に読まれたのかという思いですね。『構造と力』や『チベットのモーツァルト』も同様で、その後のことも気にかかっていました。浅田彰さんの日本の王権へのセンスの欠除(ママ)、中沢新一さんとオウム真理教との関係なども、大量に彼らの本を売ってきた身にすれば、無関心でもいられない。

「中沢新一さんとオウム真理教との関係」というのは何度も目にしたことがあったが、「浅田彰さんの日本の王権へのセンスの欠除(ママ)」というのは初めて目にした。うなずけるだけに、失笑もの。

【参考資料】として、「全集・現代文学の発見」学芸書林 全16巻別巻1巻 昭和42年11月~44年4月 が紹介されている。全16巻の収録作品も載っている。それが魅力的に思えてならない。

スキャニングをとっておくことにした。

【追記】20110410
 記事を整理していて、この全集をネット検索すると、16巻すべての目次を公開している個人ブログが見つかった。びっくり。