[NO.1167] いとま申して/『童話』の人びと

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いとま申して/『童話』の人びと
北村薫
文藝春秋
2011年2月25日 第1刷発行

どうして父親の話なのでしょうか。ここ数年、小林信彦さんも同じような本を続けて出していたので、ふとそんな疑問が頭をよぎりました。

北村氏はご両親とも名のある家の出だったとは。なるほど。

面白かったのが、父親が旧制中学時代に定期考査のときに綴った日記の内容です。北村氏も感想を漏らしているとおり、まるで現代の学生とほとんど変わりません。特に数学ができずに漏らした記述には、自分の中学や高校時代の日記を思い出します。

関東大震災の翌年、まだ余震の続いていたという日記に驚くしかありませんでした。今も、まだときどき余震が続くだけに。

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思わせぶりな終わり方なので、きっと続編も読めるのだろうと期待が高まります。待ち遠しいかぎりです。
ここで触れられているマスミさんが、別の本(NO.686『ミステリは万華鏡』)に出てきた「ベレー帽を被り、薄い鼈甲色の眼鏡をかけていた」という叔母さんなのでは。そう考えると、なるほどとうなずけます。

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p241 に出てきた「虫養い」という言葉。さすが北村薫さんです。

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