ミステリは万華鏡 北村薫 集英社 1999年5月30日 第1刷発行 |
初出誌
「小説すばる」1997年11月号~1999年4月号
『詩歌の待ち伏せ』のミステリ版といった印象を受けました。こちらの方が先に書かれていますが。品のよい北村氏独特の文体と博覧強記ぶりが発揮されたエッセイ。本格を愛し、ミステリに収まらない文学への愛着がにじみ出ています。
巻末にはしっかり「書名索引」が付されています。
幼いころの思い出として、童話作家「青山マスミ」氏に可愛がられたエピソードが披露されていました。親戚なのだとのこと。いい環境だったのですね。
p163
ベ レー帽を被り、薄い鼈甲色の眼鏡をかけていた。幼い頃には、この叔母が訪ねて来るのが楽しみでならなかった。一人では到底行けないような遠くまで、一緒に 散歩に行った。簡単な紙芝居を作って見せてくれたり、今なら保育園でやるような工作を教えてくれたりした。――そう、わたしにとっては、年に一度か二度現 れる、「保育園」のような人だった。
p168
《鯛の鯛》という話が出た。
鯛の胸ビレの根元辺りに、小さな骨がある。それが、自身のミニチュアのような形をしている――というのだ。魚類に共通することらしい。
p240
ディーノ・ブッツァーティの短編集『石の幻影』(大久保憲子訳・河出書房新社)が出た。新聞を開いたら、書評にも取り上げられていた。それは嬉しいのだが、中の短編『海獣コロンブレ』が、こう紹介されている。以下略
思わず読みたくなりました。うまい紹介です。
コメント