[NO.1070] 電子書籍の衝撃

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電子書籍の衝撃/ディスカヴァー携書
佐々木俊尚
ディスカバー・トゥエンティワン
2010年4月15日 第1刷

面白し。社会背景からの視点が強いかな。ボードリヤールが出てきたときには笑ってしまった。プラットフォームという語の意味する内容、なるほど。さらにあれま、コンテキストとは文脈なり。しかし、本書においては多様化する個人の価値感のような意味合いを含む。面白し。

比喩として音楽業界を使っているのがユニーク。たしかにCDが売れなくなって、その分、DL販売が増えている音楽分野。そんな音楽業界に出版業界を対比させつつ考察していく手法は、たしかにわかりやすかった。

で、今後はどうなるのか? キンドルやiPadより、もっと洗練された機器が出てくるのだろう。そりゃ、今後が楽しみだなあ。

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文章はこなれている。新書ということもあって、易しい。しかも、章立てごとにそれまでのまとめもされている。とくに終章のあたまでは、これまでを振り返ってみようとして、全体を要約までしてくれているのには笑えた。まるで読者をお子様扱いしているよう。逆に言えば、それだけ読者の読解力を低く見ているのだろうなあ。テクニカルタームの定義づけがされているところを、しっかり押さえて読まないとわかりにくくなる。

唯一、言い回しがおかしかったところ。
p120
そうしたネット企業に太刀打ちするためには相当な覚悟が必要ですが、......
さて、「太刀打ちできない」という表現はあっても「太刀打ちする」とはいえたかしら?

※   ※

先に挙げた、ボードリヤールを援用しているのに加え、永江朗氏「本のニセ金化」や山本夏彦氏『茶の間の正義』まで担ぎ出している。こりゃあ、PC好きな若者たちにはわかりにくいわな。