[NO.1049] 文学 2010

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文学 2010
日本文芸家協会 編
講談社
2010年4月26日 第1刷発行

こんな本があったこと、まったく存じ上げず。帯のコピーに寄れば「2009年刊行の文芸誌発表作品から精選した、18篇の小説集。ベテランの秀作から、新世代の野心作まで――。激変する時代を活写する、現代文学の最前線。」
編集委員が、秋山駿、川村湊、島田雅彦、中沢系、沼野充義の各氏也。秋山駿氏のお名前は、久しぶりに目にしたなあ。

で、収録内容。
「考速」円城塔/「生死刻々」石原慎太郎/「その部屋」河野多惠子/「おと・どけ・もの」多和田葉子/「虫王」辻原登/「不浄道」吉村萬壱/「戒名」長嶋有/「ブルーシート」浅尾大輔/「ナイトウ代理」墨谷渉/「絵画」磯崎憲一郎/「アーノルド」松波太郎/「白い紙」シリン・ネザマフィ/「トカトントンコントロール」佐藤友哉/「行くゆきて玄界灘」夫馬基彦/「街を食べる」村田沙耶香/「みのる、一日」小野正嗣/「高くて遠い街」いしいしんじ/「草屈」藤沢周

※   ※

久々に読んだ石原慎太郎氏の小説。出だしからすごい。

p17
おみくじ

自覚症状は全くなかったのだ、今年の毎年定例の検診で以前の検診の折に偶然見つかった右胸の小さな影が昨年には変化なかったのに今年になって二年前の検査の二倍ほど、一センチ五ミリくらいに広がっているのを確かめ医師は肺の癌と診断した。
彼はさらに慎重な検査での断定を望んだ、バイオプシイで細胞を取り出しての検査は部分を取り出す途中で患部が他部に感染移植され、さらなる転移を進める恐れがあると反対された。
主治医から彼の母校の胸部外科の高村教授を紹介され、持っていったレントゲン写真を眺め高村も間違いなく肺癌と断定した。
酒は適当に飲んではいた、煙草は一切やらずにきたのに肺癌という事態の割り切れなさに抵抗しょうとはした、主治医も高村教授もこの一年間の変化からして、今こそが手術のし時で先を待つ余裕はないといった。

「......が」の使い方。というよりも「が」がお好きである、ということで一件落着。
とりあえず最後まで読み終わることができ、なにより。扇千景氏の実名が出てきたときには、ギョッ。

次は河野多惠子氏。冒頭からして、わかりにくい。人物と場所、時間の関係がとらえられない。初めは、こちらの読解力不足かと思い、読みなおしたのだけれど、これは作者側の文章がわかりにくいだけであると結論。
マンションと一戸建て、どちらに先、住んだの? わからない。