[NO.1013] わが荷風

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わが荷風/講談社文芸文庫
野口冨士男
講談社
2002年12月10日 第1刷発行

中公文庫版の「文庫版あとがき」によれば、初出は集英社のPR誌「青春と読書」(当時は隔月刊)で、昭和四十八年三月から五十年二月まで十二回――二年間にわたって連載されて、五十年五月に同社から単行本として出版されたのち、翌五十一年二月に第二十七回読売文学賞を受賞した。銅賞には小説賞、戯曲賞その他の六部門があって、本書のばあいは随筆・紀行賞であった。ということになります。

最初、懐かしいあの「青春と読書」に連載されたエッセイなら読みやすいかな、程度の甘い先入観で読み出したところ、いやいや手応えがあり、とても軽く読み飛ばすことなどできませんでした。著者野口氏は自身の荷風作品との付き合いを踏まえ、丁寧に文章を書き進めており、何度もページをいったりきたりしながらの読書と相成った次第。

わが荷風
野口冨士男
集英社
1975年5月20日 印刷
1975年5月30日 発行

わが荷風/中公文庫
野口冨士男
中央公論社
昭和59年11月10日 初版
昭和59年11月30日 再版

上記3冊を同時に読み比べてやろうなどという、大それた意気込みもあったのに、途中からそんな野望はしぼんでしまい、いつの間にやら講談社文芸文庫を読むだけでも手一杯なのでした。荷風の歩いた東京を本書片手に歩いてみようか、なんぞという目的も消滅。なにより読むだけで重くて。
中公文庫版のあとがきには、
また、単行本として出版した折り、拙著を携行して荷風作品の背景を歩いたというお手紙を読者から何通か寄せられたが、ハードカバーの元版とは違って、文庫本ならポケット――女性のばあいはハンドバッグに入れられるので、その分だけ便利になったのではあるまいか。
と書かれているけれど、とてもとても。

本書(講談社文芸文庫)には、巻末、「街を歩く二人」と題した坪内祐三氏の解説が付いているのがお得。で、これもまた、いつものツボちゃんの軽さは皆無で、なかなかな文章。

しばらく時間をおいて、また再読することにします。

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