[NO.964] ボイド――星の方舟

void.jpg

ボイド――星の方舟/地球人ライブラリー
原作 F・ハーバード
訳 小川隆
小学館
1995年11月20日 初版第1刷発行

 著者は、『DUNE/デューン 砂の惑星』の作者 フランク・ハーバード。内容はスペースオペラの対極。スタニスワフ・レム『惑星ソラリス』とくらべてもいいかもしれない。表紙の題名下には、「全米ベストセラー」ってあるのですが、この本を読んで面白がるSFファンって、何割いるのか。話には聞いていたけれど、4人の登場人物が宇宙船内で延々繰り広げる議論が半分以上をしめる。

 書かれたのが1966年で、2001年宇宙の旅より以前だからその先駆性がどうだとか、いろいろいわれても、これを面白いとはなかなかいえそうにないでしょう。
 たしかに、最後の急展開する結末にまで至れば、それまで読み続けてきた読者にとって、ふーんと思います。でも、こんなに長い議論にじっと付き合った結果が、これだけではなんだかなあ。

 訳者の言葉の中に、「コンピュータの記述は古色蒼然たるものがあり、興をそぐかと思われる記述は省略させていただいた。作者が理科系の人間ではないので、いささか首をかしげざるを得ないような記述も見られた。これもテキスト上の矛盾が起きない範囲で割愛させていただいた。」であると。えツ、勝手に(?)そんなこと、できないでしょうに。ハーバードさんの承諾を得たのかしら。確かに、電気部品にどうやらキューブ(真空管)のような表現が出てきてびっくり。そういえば、その昔、北海道に強行着陸した旧ソ連からの亡命戦闘機ミグには、キューブが積んであったって、当時話題になりましたっけ。あれって、1966年よりもずっと後でした。