『こころ』は本当に名作か/正直者の名作案内/新潮新書 小谷野敦 新潮社 2009年4月20日 発行 |
著者ご自身で判断を下した内容なのだそうです。
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だからといって、日本で、古典と言われている本をあげて、どこかの本からとってきたような解説やら粗筋(あらすじ)やらを載せるつもりは、もちろんない。丸谷才一が時おりやるように、あるいは福田和也が日本の現代作家についてやったように、私独自の判断で、世間的には古典名作とされているものでも、ダメならダメと判定を下すのだ。実はそれがやってみたかったわけで、なかんずく最近のドストエフスキーばやりと、漱石の『こゝろ』ばやりは苦々しくおもっているから、この二つをなぜ、どのように私が認めないか、思うさまを述べるつもりである。
ドストの作品は、『永遠の夫』『貧しき人々』『地下生活者の手記』あたりの中編は割合好きだが、それにしてもルソーやゲーテに及ばないし、後記の代表作『罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフ』となると、これはもうキリスト教徒の読み物であって、はて日本にそんなにキリスト教徒がいたのかしら、と思う。のだそうです。なるほど。
漱石『こゝろ』が面白くないというのは、もはや定番なのでは。これは高校の教科書で取りあげられたことが大きく影響しているというのも今や定説。
それよりも、正宗白鳥が漱石は面白くないと言っていたことの方が有名なので、なぜ、こちらを取りあげなかったのかな。
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