にほん語観察ノート 井上ひさし 中央公論新社 2002年3月28日 初版印刷 2002年4月7日 初版発行 |
初出 読売新聞日曜版 一九九九年四月四日~二〇〇〇年五月十四日
コラム集のような体裁。感想文めいたいいかたをすると切れが悪いというべきか。著者一流の批評があまり感じられず。もったいない。
これではあまりにそっけないので再読してみた感想。物わかりがいいのですね。妙に。
p15
ちょっと聞くと、この「わからないけど」は、冷たくて、投げやりで、無責任で、その上、なんだか突き放されたようで、たしかに嫌な言葉です。しかし、それを使うときの動機を考えてみると、どうも、新種の敬語の一種なのではないか。もっと正確に言うと、うんと敬意の度合いが低いけれど、これは半敬語法というやつですね。
相手に自分の意見を言う。そのとき、相手の意見は自分とは違うかもしれない。その場合をあらかじめ考えの中に入れて、「よくわからないけれど、わたしはそう思うのですよ」と緩衝材を入れる。つまり、これは言葉のクッションなのではないでしょうか。
対立した意見を口にして、自分と相手との関係をこわしてはいけない。二人の関係を中和して、感情的に係わり合う危険を避けるために、「わからないけど」というクッションを挿(はさ)む。
コメント