[NO.727] 読書人の悦楽

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読書人の悦楽
谷沢永一
PHP研究所
1994年6月3日 第1刷第1版発行

 読みであり。書評を集めた文集ではありません。これまで出版された関連書から抜粋されて編まれています。

初出紙
『読書人の立場』昭和52年10月20日 桜楓社
『読書人の園遊』昭和53年10月20日 桜楓社
『読書人の壺中』昭和53年11月10日 冬樹社
『紙つぶて二箇目』昭和56年6月20日 文藝春秋

p71
......これは私が機会ある毎に再三申していることなんでありますが、高橋亀吉さんの著書が、これまた現在たいへん冷遇されております

p111
 日本近代文学館が『「新潮」作家論集』全三巻(合計七五〇〇円)という、涙の出るほど有難い絶好の資料集を、昭和四十六年十月に刊行した。途中略
しかるに、僅か五〇〇部しか作らなかったこの本が刊行後すでに四年近く、まだ八〇部は残っているという始末。一〇〇〇人を越す日本近代文学会の会員のうち、『「新潮」作家論集』を購読しなかった者は、全員、ハリツケに処すべきである。


p192
 我が国のコラム史に双璧をなすのは、楚人冠と泣菫。星新一は『きまぐれ博物誌』(河出書房新社)の「読書遍歴」に、中学時代、『楚人冠全集』に「めぐりあったことで私は満足である」と記している。
途中略
 そして、薄田泣菫と言えば『茶話』。この人間臭い話題のみを以て織りなすマンダラが、当代どの文庫にも収められていないのは不思議である。