残る本 残る人 向井敏 新潮社 2001年1月30日 発行 |
毎日新聞、週刊朝日掲載、初出80年代後半からの書評集。巻末には書名索引付き。
とにかく面白い。まず、文体が力強い。つまり、それだけ各書評に力が込められているということでしょう。もちろん選書の内容がいいのは当然のこと。広く目配りされた本の数々は、どれも魅力的。したがって、最初の頁から通読してもいいだけでなく、ぱらぱらとめくって読み出しても、巻を措く能わず。
数ある書評集の中でも、秀逸。
p146
なにしろ「風」じつは百目鬼恭三郎は、『現代の作家一〇一人』(初刊昭和五十年、新潮社)で現代日本の作家作品に対する的確周到な眼識を、『奇談の時代』(初刊昭和五十三年、朝日新聞社)で中国の諸文献に関する造詣の広大を、また『新古今和歌集一夕話(ひとよがたり)』(昭和五十七年、新潮社)で日本の古典についての知見と理解の深さを披露した人だったのだから。
中略
平成三年春、百目鬼恭三郎は病を得て天に召し返されたが、さいわい、晩年の遺作が『風の文庫談義』(初刊平成三年)、『解体新著』(初刊平成四年、いずれも文藝春秋)の二冊の本にまとめられた。
p169
あるいは、「チョウ」と「マチ」の違いを調べた井上ひさし。元来が地図の好きな人だけあって、地図本を調べ抜いたあげく、規制や約束事は何もない、「マチ」か「チョウ」か、一つ一つ覚えてゆくしかないという結論にいたりつく。
東日本と西日本の違いはないのでしょうか。
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