[NO.700] 石の幻影-短編集

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石の幻影-短編集
ディーノ・ブッツァーティ
大久保憲子
河出書房新社
1998年11月24日 初版印刷
1998年12月4日 初版発行

 5月に読んだ NO.686『ミステリは万華鏡』(北村薫著・集英社)のなかで紹介されていた短編「海獣コロンブレ」をよみたくて、手にしました。いざ、読んでみると寓話ということでしたが、どうもピンとこず。それほどではありませんでした。

 本書タイトルにもなっている「石の幻影」、読み終わってみても、なんだかなあ。SF的とかサスペンスが、という話もありましたが、肩すかしのよう。巨大 な渓谷一面に建設された人工知能という発想は、1960年当時からみれば斬新なのでしょうか。スタニスワフ・レムの「スタニスワフ・レム」を想起させます が、それまで。恋愛モノをここに持ち込まれても困ります。
 冒頭の軍による秘密の連続、どんな施設へ連れて行かれるのやら、というプロットがフランツ・カフカの「城」を思わせるというのですか? これも買いかぶりすぎでは。

 現代のSFが依って立つ地平は、ここで描かれた内容から遙か先にまで進んでしまっています。

 表記について。おやっと思ったことに「あぁ、ここです」(p53)という小さな「ぁ」という表記の仕方がありました。p57には「えぇ、何なの? 以下略」という小さな「ぇ」も。そりゃ、ないのでは。