鬼平対甚一/犀の本/跋 池波正太郎 植草甚一 晶文社 1983年8月30日 発行 |
この本のタイトルを見たとき、どう考えてもミスマッチではないかと思ってしまいました。まあ、JJ氏の生まれを考えてみれば日本橋小網町ですから、そんなことはないはずですが。
巻末にある池波氏による「晩年の植草さん」の中に、本書の成立するきっかけが書かれています。
p167
いまは亡き植草甚一さんが、新聞で中間小説の月評をはじめられたのは、十年ほど前のことになるだろう。
そして、はじめて、植草さんは〔時代小説〕の面白さに取り憑(つ)かれてしまったのだった。
p169
何年かたって、私の作品集十巻が朝日新聞から出ることになったとき、担当者が、植草さんに全巻の依頼をしたのは、いうまでもなく、ユニークな月評に、こころをひかれたからだろう。
それが、どのようにユニークなのか、この一巻をお読みになれば、たちどころにおわかりいただけよう。
これが縁となり、私は植草さんと友達になった。
最後に「昭和五十八年七月」とありますから、月評をとおして時代小説と出会ったのは昭和48年ころのことでしょうか。若者対象に著書をたくさん出していた時代です。
上記に、「それが、どのようにユニークなのか、この一巻をお読みになれば......」とありますが、内容はいつものJJ氏らしい文章です。とても時代小説の解説とは思えません。いきなりニューヨークの話になったり、行ってきたばかりのジャズのコンサートのことだったり。面白いですねえ。
池波正太郎氏の小説では、『剣客商売』を読んだくらいなもので、特に毛嫌いしているわけでもありませんが、本書のことは知りませんでした。この本の存在自体に驚きながら読みました。
いいなあ「これが縁となり、私は植草さんと友達になった。」ってとこ。たまりません。幼少時、自転車の三角乗りをしたであろう池波正太郎、いや正ちゃん。兜町で使いっ走りの小僧だった正ちゃん。その帰りに、屋台の寿司屋に入ることが楽しみだったという正ちゃん。JJおじさんこと甚ちゃんと友だちになったんだ。
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