読書日記 中村真一郎 ふらんす堂 1998年1月1日 初版発行 限定1000冊 |
あとがきから引用
これは一九九六年度の『日記』のなかから、毎月、私の読んだ本にいての部分を抄記して、雑誌「すばる」の巻末に、毎号、連載させてもらったものを、今回、一本にまとめて小冊子とし、毎年の例として、ふらんす堂から刊行して知友に配り、年頭の挨拶に代えるものである。
しかし、九七年の歳末近くに、この『読書日記』の校正を通読してみると、老生の読書が想像以上に断片的であり、我が精神に一本の太い流れが充分に見られ ないことに意外の感を持った。九八年度は、志を新たにして、ある古典を一年間にわたって、ゆっくりと読み上げるという、落ち付きを取り戻し、自己統一を心 掛けねばなるまい。
それと、毎月ごとに「懐かしい」という懐古的な言葉の頻出するのにも驚いた。私はいつの間にか、未来に向って読む態度を、過去に向ってするように変えていたのか。これは肉体という奴が、忌々しくも精神に反逆して、老化を主張しはじめたからに相違ない。
読書は精神の働きである。肉体の跳梁に任せる訳には行かない。以て自戒の辯とする。
太平洋上の九八年の初日の出を待ちながら伊豆海星巣にて
中村真一郎
著者が亡くなったのは1997年12月25日のこと。なんとも最期まで頭脳が活発だったということでしょうか。上記にも、「懐かしい」という懐古的な言葉の頻出を自戒しています。
今から読むと、既に亡くなった方がたくさん出てきます。読んでいる本の多彩さと交友の幅広さに驚かされました。
意外だったのが、政界関係ともやりとりが多かったこと。
○(十一月)十三日。サントリーホール、中村紘子、ピアノ。紘子さん流のベートーヴェン、大いに愉しむ。財界人、樋口広太郎氏の花束贈呈、二次会では小生の高校の十年くらい後輩の自民党、元、現閣僚諸氏と歓談。君島若夫妻に紹介される。
著書を贈られることを「恵投」と表記。
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