[NO.521] 30 BLANCPAIN ESSAYS/機械時計の時間

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30 BLANCPAIN ESSAYS/機械時計の時間
製作・発行 スウォッチ グループ ジャパン株式会社 ブランパン事業部
発売 株式会社青木書店
イラストレーション 下田昌克
装丁 城所潤
編集コーディネイト 笛木敬代
編集・制作 恩蔵裕子
2001年11月1日 発行

 不思議な本。「スウォッチ」も関連しますが、時計にまつわるエッセイを集めた内容。各ページ、ノンブルが振ってありません。豪華執筆陣の顔ぶれがすごい。

1 木村尚三郎 東京大学名誉教授
2 伊藤緋紗子 翻訳家・エッセイスト
3 青島広志 作曲家
4 天本英世 俳優
5 出石尚三 服飾評論家
6 常盤新平 作家
7 金沢碧 女優
8 南川三治郎 写真家
9 池辺晋一郎 作曲家
10 青島健太 スポーツライター
11 清水宗己 コピーライター兼編集者
12 田村能里子 画家
13 田崎真也 ソムリエ
14 堀文子 日本画家
15 沢野ひとし イラストレーター・作家
16 高嶋康豪 環境微生物学博士[FIAE称号博士]白隠護持会事務局長
17 油井昌由樹 夕陽評論家
18 渡壁煇 横浜みなとみらいホール館長
19 東理夫 作家
20 小山裕久 料理人
21 金光修 TVプロデューサー
22 松山猛 エッセイスト
23 西尾忠久 多摩美術大学講師
24 松本零士 漫画家
25 織田一朗 時の研究家
26 畠山直哉 写真家
27 香山知子 「世界の腕時計」編集長
28 永六輔 放送タレント
29 瀧村仁 映画監督
30 ジャン・クロード・ビバー ブランパン社 社長


東理夫 心の豊かさを計る腕時計
 温度や湿度を計ることも好きだった。結構大人になるまで、湿式と乾式の温度計が机の横にぶら下がっていた。〈バロメーター〉が〈ヘクトパスカル〉という 馴染みのない名前に変わったあたりから、湿度の方はいくらか興味が薄れ、今はセ氏とカ氏が一目でわかる温度計をいくつも近くにおいてある。

 ここで、はたと止まってしまいました。「バロメーター」って何のことでしたっけ。調べてみると、もともとは気圧のことだそうです。つまり、気圧の単位が ヘクトパスカルに変更になったころのことを指しているのでしょう。天気予報で気圧の単位をミリバールからヘクトパスカルに変更したのが1992年。当時、 話題になりました。
 ここで、湿度の単位というのを調べてみると、いろいろあるのですね。てっきりパーセントだけかと思っていました。

金光修 1日の長さ
後にこの悩みを解消するための文章を精神科学の雑誌の中で見つけた。J・アショフというドイツの医学生理学者の実験による、〈人間は、一切の時間的情報や 社会的な制約から遮断され、自由な状態になると1日を25時間として暮らし始める〉という学説である。これは多くの学者によっても確かめられ定説になった という記事である。

 聞いたことがあります。エッセイですから無理な希望ですが、出典が明記してあるとよかったです。

松山猛 静かなるスペクタクルが/生みだした/小さな人工宇宙
 やがて人々は再び、機械式時計の持つ本質的な素晴らしさを見直す時が来る、と言った彼の言葉どうり(ママ)、時を刻む小さな人工宇宙[機械式時計]は、人々のあこがれの品という地位に返り咲いた。

 刊行された本の中で、「どうり」という表記を目にするのは、めったにありません。筆者が、こう記したのでしょうか。

織田一朗 人類の英知の歴史が/凝縮された時計
 知己に関する理論に「ジャネーの法則」がある。フランスの心理学者だったポール・ジャネーがまとめた理論で、「人間の心理的な時間は年をとるごとに速くなり、年齢の逆数に比例する」というものだ。
 五〇歳の人の一年(人生の五〇分の一)は一〇歳の子供(人生の一〇分の一)の五分の一なので、五〇歳の人は時間の推移を一〇歳の時の五倍速く感ずるという。

 こんな理論があったなんて。「ジャネーの法則」なんて、初めて知りました。