[NO.481] 装丁物語/白水uブックス 1089

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装丁物語/白水uブックス 1089
和田誠
白水社
2006年12月1日 印刷
2006年12月20日 発行

目次
01 装丁で忙しくなり始めたころ
02 装丁と装幀
03 谷川俊太郎さんの本
04 文字について
05 装丁の依頼
06 丸谷才一さんの本
07 映画の本の装丁
08 先生たちの本
09 シリーズものの装丁
10 つかこうへいさんの本
11 紙の話
12 画材について
13 文庫のカヴァー
14 村上春樹さんの本
15 人の絵を使う
16 自著の装丁
17 言い残したこと
18 バーコードについて
あとがき

 もともと単行本で、1997年に出版されたものだそうです。

 著者が語った内容をそのまま本にしたような文体。こういう文体も面白いですね。特に最後の「バーコードについて」は、激しく熱い主張(糾弾風)が、ひしひしと伝わってきます。
 個人的には、p18「2 装丁と装幀」の方も、気にかかります。以下引用。
 装丁は、装幀とも書きます。どれがいちばん正しい、ということも特にないようだし、各出版社でも統一はしていないようですね。ぼくも別段、こだわっていません。何となく、気分で、装幀という字を使うことが多かったような気がする。その程度でした。
 文章で生計を立てている方々は、「表記」ということについて、もっと神経を使っているはずです。だから、どちらを使うのか、ということとは離れたとしても。

 さて、「バーコードについて」です。久々に、熱い主張を読ませて(聞かせて)いただきました。流通の立場からすれば、ぜひともバーコードを表紙裏に付け たい、それも統一した場所で。一方、本のデザインをしている立場である著者からすれば、そんなことは到底認めるわけにはいかない。この両者の意見の食い違 い。
 著者の言い分で強く引かれたのは、いつの間にか知らないうちに、このバーコードを裏表紙に付けることが決まってしまっていたこと、それも一部の人間だけ で決めてしまっていた。さらに、バーコードの導入を決めた人たちは、本の装幀(著者が使っているので今回はこの表記を使います)というものは、出版文化の 大切な一部を担っている、ということを、まったく考慮していない。
 ここで思い浮かべたのは、PCで使われている日本語表記について、JISコードのことでした。第1水準、第2水準、などという漢字を決めたのは、だれだったのか? いつの間に決めたのか。どういう基準で決めたのか。いろいろ議論が噴出しました。
 共通しているのは、「便利」(効率)という観点。著者は、さらに踏み込んで、「便利」であれば、どんどん導入してもいいのか、というふうに話題が進展し ていきます。この文章を書いた時点では、装幀の仕事は激減、いちばん忙しかったころの二割あるかないかにまでなってしまったといいます。もっとも、その 後、出版社によっては、方針を変えるところも出てきたようですが。

 p5「1 装丁で忙しくなり始めたころ」によれば、著者が装丁(ここでは、この表記を使っています)をたくさん手がけるようになるきっかけとなったのが、一九七二年の遠藤周作『ぐうたら人間学』(講談社)だったのだとか。なるほど、でした。
 また、著者は筆記用具にはロットリングを主に使っているのだそうで、初めて使い出したのが六九年だったとありました。ロットリング、この名前をしばらく 忘れていました。ワープロがなかった時代、文字の場合にもケント紙にロットリングで書くと、ゼロックスコピーがきれいに出ましたので、当時愛用していまし た。

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