[NO.432] ゆの字ものがたり

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ゆの字ものがたり
田村義也
新宿書房
2007年3月10日 第1版第1刷発行

 岩波書店の雑誌『世界』『文学』編集長だけでなく、数多くの書籍の装釘に携わった田村義也さんによるエッセイ集です。

 巻末「初出一覧」によれば、本書題名となった「ゆの字ものがたり」は福音館書店「いまは昔 むかしは今」シリーズ第5巻『人生の階段』一九九九年。最終 巻に載ったものだそうです。『のの字』でさまざまに紹介された「の」の字についてと同様、「ゆ」の字についての文字論なので、姉妹編となる本書の表題にふ さわしいと編集部で考えたとあります。
 「ゆ」の平仮名文字は、「由」の草書体である。この一筆描きの優美な曲線が、銭湯ののれんに大きく染めぬかれていたのが、ついこのあいだまでの町の風景だった。以下略

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 本書は、一九九六年に刊行された田村義也著『のの字ものがたり』(朝日新聞社)(以下、『のの字』と略記)の続編として、田村さんの生前から計画されていたものであるが、編集内容については、全面的に著者の意向が反映されているわけではない。
 収録内容は、『のの字』以後に発表された文章を中心に、それ以前のもの、あるいは『のの字』の付録に収められているものも四点あるが、同書は現在、版元品切れとなって入手不可能であるため、重複も無駄ではないと考えた。
 『のの字』が自作の装丁作品論ともいうべき内容であるのに比して、本書には、装丁にまつわるテーマ以外に、旅行記、食・酒、あるいはご自身のルーツや戦争体験についての文章なども収め、エッセイ集のおもむきをもたせた。       (編集部)


目次

装丁と私/芋版・凸版・活版・鉛版/装丁と時代/装丁自評――幼少年期のイメージから/「ゴールデンバット」と中国のコウモリ文様/中国藍印花布の「鯉の ぼり」/わが装丁を語る――先ずは「書名の文字を書く....../ゆの字ものがたり/青山二郎装丁本の時代/饅頭本の小宇宙――「追悼本」のこと、書き文字のこ と


久保栄さんのこと/坂口謹一郎先生との本づくり/金達寿さんとの思い出――岩波新書『朝鮮』刊行の周辺/八木義徳本を装丁する/長見義三(おさみぎぞう)さんの本


「東北」へ――想うままに/聖書――私の秘蔵の一冊/運動嫌い/古本の街・自由ヶ丘界隈/焼津の思い出/沖縄への旅――岩波新書『沖縄』刊行前後/中国紀行――四川の街々と我眉山、長江三峡下り


枝豆と糂■【米+太】(じんだ)/生玉子を御飯にかけて/自然酒「田村」について/日本酒についてのアンケート/《対談》泡盛今昔


『世界』――編集後記(全22回)/『酒文化研究』――編集後記(全5号)/『みすず』――読者アンケート/『一冊の本』――創刊三周年記念企画アンケート

初出一覧および注
お礼にかえて............田村久美子
〈完全版〉田村義也装丁作品一覧(1953~2003)