文房具を買いに 片岡義男 東京書籍 2003年8月13日 第1刷発行 2003年9月17日 第2刷発行 |
文房具に関するエッセイでは、串田孫一氏のものが強く印象に残っています。今回読んだ本書は、いかにも片岡義男だ、と思わされる内容でした。串田氏の文章は、 どちらかといえばヨーロッパを感じさせるのに対し、こちらはいかにもアメリカです。それも、一昔も二昔も前のアメリカのイメージとでも呼んだらいいでしょうか。キラキラ輝き、大量生産された(工業)製品の数々。洒落た感覚のインダストリアルデザイン(工業意匠)。
このところ続けて、明治大正、せいぜいがところ戦前までの文章をたくさん読んでいました。それで、文具といえば丸善のインキ壺と付けペンなどといったものを(毎日)思い浮かべていただけに、サインペンやボールペンに代表される(使い捨て)アメリカ製の文具は、印象が違いました。どちらかというと軽い感じです。それら筆記具に比べ、ノート類や手帳、カードなどの方が魅力を感じたのはなぜなのでしょうか。読後もずっと考えていますが、答えが出ません。
掲載されている文具の写真撮影も、筆者自身が行っています。光の加減など、いろいろ工夫しているという記述も見られるだけあって、文章だけでなく、それらの写真も魅力的でした。
唯一気になったのは、使うために集めたのではなく、写真に撮るため(文章を書くため)に買ってきた、という記述があったことです。なんだかなあ。大量に購入した数々の文具が積み重ねられた写真を目にしながらであるだけに、それもまたアメリカ風だな、と感じました。
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