戦中派天才老人・山田風太郎/ちくま文庫 関川夏央 筑摩書房 1998年12月3日 第1刷発行 1999年1月5日 第2刷発行 |
はじめに
山田風太郎は戦中派であり、物語の天才的作者であり、一九九〇年代の老人である。
「戦中派」「天才」「老人」、そのすべてにやまざる興味を持ちつづけてきた私は、長年の宿願かなってこのたび山田風太郎と一年有半にわたって親しむことができた。それは私のみならず、この本の読者にとってもまことに得がたい幸運である。戦中派天才老人作家のロにする機知、警句、慨嘆、妖説、すべてが耳朶 (じだ)にしみとおる批評であり物語である。その態度の飄逸、健忘までもが同様である。
インタビューのかたちをとっているこの本だが、実はインタビューではない。長期間にわたって清談雑談冗談をとりかわし、そこから山田風太郎の浩瀚(こう かん)を著作に遡(さかのぼ)ってあたりつつ、座談的物語にしたてたのである。山田風太郎のいわなかったこと書かなかったことはまったく含まれてはいないが、ゆえにこの「物語」の文責はあげて関川夏央にある。
ゆるゆると進められる山田風太郎と関川氏とのやりとりが、なんともはや。
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