私に人生と言えるものがあるなら 笠木透 萌文社 1998年7月28日 初版第1刷 |
p299
私に人生と言えるものがあるなら ――あとがきとして
私に人生と 言えるものがあるなら
あなたと過した あの夏の日々
きらめく草の葉に 心がはずみ
野に咲く花に 心がかよう
私に人生と 言えるものがあるなら
あなたと過した あの夏の日々
愛していたのに あなたは消えた
信じていたのに なぜか分らない
私に人生と 言えるものがあるなら
あなたと過した あの夏の日々
許されるのなら やりなおしてみたい
出来ることなら あの日に帰りたい
私に人生と 言えるものがあるなら
あなたと過した あの夏の日々
フォーク・ソングにかかわって、三〇年たちました。フォーク・ソングとは、なんなのだろう。よく分からないまま、うたをつくり、うたってきました。
考えてこなかったわけではありません。考えながらやってきて、よく分からない、のです。
何ひとつ成果らしいものもなく、明日のことばかりを思い、昨日のことなど、ふり返る余裕もなく、今日のことでせいいっぱい。夢中になって、全国を走りま わってきて、はっと気がついたら、三〇年もたっていて、それでも、いまだに、よく分からないのですから、よほど奥が深いのか、頭のデキが悪いのか。
いずれにしても、よく分からないというのは、不快でも、不満でもなく、その逆で、おもしろいのです。ぼくにとっては、まぶしいほどに魅力的で、楽しいことなのだ。よく分からないから、その分からなさを楽しんで、ここまでやってこれたのです。
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