イギリスは不思議だ 林望 平凡社 1997年1月17日 初版第1刷発行 1997年2月17日 初版第2刷発行 |
カラー写真が美しい本です。林望先生の英国一連のシリーズは、流行した当時には見向きもしなかったのですが、このごろぽつぽつと読むようになりました。
ロンドンの古い町並みや郊外の歴史的な民家など見とれてしまいます。「ある程度の中古車なら買えるほどの値段」であったというアスプレイ社製の「理想の鞄」についてまつわるエピソードには、成る程と思わされました。(p35)
p45「不思議の国のスペクタクル」として、いくつかの博物館や美術館が紹介されていますが、ここはやはり大英博物館についても触れて欲しかったです。
p7「ロンドンで驚く」から抜粋
そうかと思うと、またイギリス人に は変な趣味があって、たとえば人間のミイラを飾っておくなんていう、いささか猟奇的というか変態的というか、そういう趣味があるのである。有名なマダム・ タッソーの埴人形館なんてのも、考えてみると嫌な趣味です。あれは、ある意味で死体陳列というか、ネクロフィリア的晴好に違いない。どうもイギリス人の心 にはそういう血胆い暗部があることは否めない。それが、幾多の高名なミステリーを生み、また一方で有名な殺人鬼斬り裂きジャックをも生んだ土壌だというこ とを知らねばならぬ。
十八世紀から十九世紀にかけて活躍した、功利主義の思想家ジエレミー・ベンサムという人は、その功利主義の至れるところ、みずからの死体を一個の物体と 看倣し、遺言によって、それを友人たちの前で解剖せしめ、なおかつ、その死体をば、ミイラに製造して、飾っておくことにしたのだそうである。これも驚くべ き趣味ではないか。そのミイラはじつにいまでもロンドン大学の構内に歴々と飾られている。私は、ベンサム研究の第一人者たるローゼン博士の家に下宿してい た関係上、博士に連れられてこれを見物しに行ったけれど、実際は、ほとんどその死体は腐ってしまってミイラ化には失敗し、髪の毛など、ごくごく一部分が 残っているだけなのだそうである。したがって、現在見るベンサムのミイラは蝋人形であると言ってもよいのであるが、それにしても、と驚く。
以下略
■発想が違うのですね。ベンサムのような死の迎え方はできそうにありません。
ところで、偶然見つけたのですが、この下にある写真「ウエストピア」の施設と、下記「オランダ歩けば」の左下隅に載せた写真「スヘフェニンゲン」の施設 は、どういったものなのでしょうか。ヨーロッパでは、海沿いの観光地に行くと、このような施設があるものなのか。下記「オランダ歩けば」の説明では古絵葉 書」にも同様な施設が写っているということです。
コメント