はなかっぱ お花コレクション 《シーズン2025年4・5・6月期》最終日627ポイント で終了しました。
2025年4・5・6月期のシーズンに入って2度目になる40ポイントの花(ラン)が咲きました。
今シーズンもそろそろ終わりに近づいてきました。前シーズンのような高ポイントには届きそうにありませんが、まずまずでしょうか。
はじめての橋本治論 千木良悠子 河出書房新社 2024年03月20日 初版印刷 2024年03月30日 初版発行 325頁 |
小説、古典新訳、評論など、ジャンルを横断して活躍した知の巨人・橋本治。桃尻娘、言文一致体、歴史、美術、浄瑠璃など、日本と日本人と日本語を問いつづけた作家・思想家の初の本格評論。
本書の出版社河出書房新社のサイトから「この本の内容」を引用しました。リンク、こちら
最近の出版社サイトでの要約はどれも感心するばかりの賢い要約文ばかりですが、これはいただけません。「知の巨人」を使った段階でもう無理。立花隆だの養老孟司のことをそう呼ぶのを見たとき、唖然としました。お二人とも嫌がらなかったのでしょうか。少なくとも橋本治という人が受け入れたとは到底思えないので、おろおろしてしまいました。
絡んだついでにもうひとつ。末尾の「初の本格評論」というのは、こっちの方がインパクトあったかと。
『はじめての橋本治論』は、日本(文学)史上初めて刊行された一冊丸ごと橋本治を論じる単著であり、
chisato_mrt さんによる no+e への投稿から引用です。リンク、こちら
「単著」というところに驚きました。(「初の本格評論」でもいいんですが。)
あんなにもたくさん書いていた橋本治さんです。
それなのに、でもやっぱりなあです。
特徴として、扱うジャンルを小説に限定しています。
小説では、『サイモン&ガーファンクルズ・グレイテスト・ヒッツ+1』あたりで、あれっ? ついて行けそうになくなり、その後脱落。それでも「桃尻娘シリーズ」だけは最後まで付き合いました。
千木良さんから(著者が長年培ってきた)橋本治さんへの思いが強く伝わってきたのが「桃尻娘シリーズ」。第2章が「桃尻娘シリーズ」を扱っているのですが、ほかの章でもちょこちょこ「桃尻娘シリーズ」が顔を出します。橋本治さんにとっても桃尻娘は特別な存在だったのだとか。
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千木良さんの脳内に構築された「OSAMUデータベース」を稼働させるといいますが、いやはやどう処理していらっしゃるのやら。膨大なデータ量の処理をこなしています。
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本書では巻末の【参考文献一覧】のうち5頁を「橋本治作品」に割いています。
かつて、熱烈な橋本治ファンサイトがありました。内容も充実していて作品データも整理されていたような。それを見たとき、何か調べたいことがあれば、このページが解決してくれそうだなと思ったものです。それが閉鎖され、消えてしまったのですからびっくりです。
今やネット上からはウィキペディアでしかアプローチできないのでしょうか。
追悼雑誌『KAWADEムック 文藝別冊 追悼総特集 橋本治 - 橋本治とはなんだったのか?』、『ユリイカ2019年5月臨時増刊号 総特集=橋本治』あたりが(調べたいときには)手がかり?
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命名でおかしかったのが「カシマシマンジ術」(P.50/P.72)
「カシマシ」とは久生十蘭の『「姦(かしまし)』で、「マンジ」は谷崎潤一郎のあの『「卍(まんじ)』のこと。ほかにもジャン・コクトーの『声』、レーモン・クノーの『地下鉄のザジ』を挙げ、「読んでいて向こうから声が聞こえてくるようなものが好き」だという橋本治は、これらを「桃尻娘」を書く際に影響を受けたと語る。(『リア家』の一時代」「ユリイカ」二〇一〇年六月号、宮沢章夫との対談)P.50
目次
第1章 橋本治と日本語の言文一致体 7
1 規格外の小説家 2 書物は人の孤独を救う 3 みんなでやったぜ言文一致 4 時計の針を進めるために
第2章 小説を語る声は誰のものなのか?―「桃尻娘」シリーズ全6部 31
1「桃尻娘」とは何だったのか 2 世の中は死んでいる! 3 声の文学 4 楽園に帰ろう 5 三人称の作者(かみさま)とは誰か 6 橋の彼方に
第3章 関係ない他人の幸せを描こう―『蝶のゆくえ』その他の短編集 101
1「普通の日本人」とは誰のことなのか 2「ふらんだーすの犬」の残酷 3 父の不在 4 愛の幻想に囚われて 5 鎮魂の小説 6 青い夜風の吹く大地
第4章 私たちの百年の戦記―『草薙の剣』 161
1 ヒーローになれない日本人 2『草薙の剣』第二章までのあらすじ 3 第三章以降のあらすじ 4「三つの謎」の答え 5 草薙の剣を継承する 6 岸辺の目覚め
第5章 四つの家の物語―『巡礼』『橋』『リア家の人々』 241
1『巡礼』 2『橋』 3『リア家の人々』
第6章 その他の小説・戯曲一挙解説 275
1 デビュー前 2 初期作品 3 中間作品 4 後期作品
あとがき 317
初出一覧
第1章「橋本治と日本語の言文一致体」......「文學界」2022年1月号
第2章「小説を語る声は誰のものなのか?」......「文學界」2022年6月号
第3章「関係ない他人の幸せを描こう」......「文學界」2023年1月号(「橋本治と戦争」―『蝶のゆくえ』その他の短編集について」改題)
第4章「私たちの百年の戦記」......「文學界」2024年1月号・2月号(「橋本治『草薙の剣』論」改題)
第5章「四つの家の物語」書き下ろし
第6章 その他の小説・戯曲 一挙解説」書き下ろし
あとがき......書き下ろし
昭和三十年代 演習 関川夏央 岩波書店 2013年05月28日 第1刷発行 194+6頁 |
今年は昭和百年だそうで、昭和特集を目にすることが増えました。本書は出版されてから12年も経ち、しかも昭和三十年代だけに対象を区切った内容ですが、興味深く読むことができました。
ところで、どうして昭和三十年代なのか。これがもし二十年代であれば、まだ占領軍による影響が強すぎるのでしょうか。なにはともあれ独立し、貧しくとも元気だった(と呼ばれることの多い)昭和三十年代。
著者関川夏央さんは昭和24年生まれですから、小学校入学から中学校卒業までがちょうど昭和三十年代に該当しそうです。肌感覚としての時代の空気を覚えているでしょう。
書名に「演習」のつく理由が最初に説明されていました。(P.1)もとは岩波書店の若い編集者たちを相手に関川さんが話した内容だったのだそうです。つまり、彼らへのお話=演習です。〈若い聞き手たちの質問やものの見方に教えられるところが、とても多かった。〉といいます。天下の岩波書店編集者ですよ、聴講者は。
かつて愛読書だった『夏彦迷惑問答 誰か「戦前」を知らないか』(山本夏彦、文春新書)は〈工作社の「共通一次」世代の若い女性社員数人を相手に、主に明治大正昭和初年の世相風俗について直接間接の知識見識を駆使して語る一冊で〉した。
平成11(1999)年出版の『夏彦迷惑問答 誰か「戦前」を知らないか』が今の若い社員は戦前のことを知らないといいますが、2013年出版の本書にとっての昭和三十年代は、わずか50年そこそこしか経っていない昔のこと......とも言いきれないのですね。
本書を読むと、どれだけ現代の若い人に当時の世相が通じなくなっているのかを思い知らされます。同時に自分が親の年代の世相をどれだけわかっていなかったのかを類推してもいました。こうして歴史は巡っていくのですね。
出版社サイトに詳細な紹介と目次が出ています。リンク、こちら
◆「原っぱ」は、空襲の焼け跡の名残りです。P.7
◆当時の日本は、東京であれどこであれ、子どもたちであふれていました。子どもの数が異常なまでに多く、子どもたち自身でさえうんざりするほどでした。P.12
◆昭和三十年代は、大陸で旧制中学、旧制女学校を出て帰国・復員した少年たちが社会の第一線に出た時期でした。『砂の女』の安部公房や、もう少し若い世代で音楽の小澤征爾の世界的な活動も、この頃始まります。P.125
◆私たちは、いくら懐かしくても昭和三十年代に帰ることはできません。かりに帰れたとして、花粉症のない快適さはあっても、「ウォシュレット」どころか「水洗」のない環境には耐えられないでしょう。どんな回想にも、現実のにおいはともなわないのです。
昭和三十年代は、端的にいえばですが、不便さと「教養」が共存した時代でした。「教養」は「文学」といいかえてもよいでしょう。
貧しいにもかかわらず、人は意地を張るように本を買いました。P.193
どこかしこものっぺりしたアスファルトで舗装された道路ばかりになってしまった今の日本では、「水洗」のない環境を理解しろという方が酷なんでしょうね。
土偶を読む/130年間解かれなかった縄文神話の謎 竹倉史人 晶文社 2021年04月25日 初版 2021年05月15日 2刷 347頁 |
エッセイで止めておけばよかったのに、「研究書」であると自分で称しているので、おかしな方向へ。
『土偶を読むを読む』を先に読んでしまったので、ということを差し引いたとしても、わくわく面白くは読めず。『土偶を読むを読む』を読んだ記事へのリンク、こちら
本書の刊行後に行った対談やネット上の記事だけではない。すでに本書の「まえがき」「あとがき」のなかに、十分挑発的な表現があることに、あらあら。
これは何かの悪い冗談だとしか思えないのが新著の宣伝のあること。
晶文社のXから リンク、こちら
【発売日確定!6月12日刊行】今度は「世界」の謎を解く!竹倉史人『世界の土偶を読む――コスチェンキの精霊はなぜ30000年前のユーラシアの森で捕縛されたのか?』。人類の認知システムに関わる根源的探究と太古の科学への仮説的推論[アブダクション]が導く、新しい研究領域の誕生。克明に描かれる「人類史上の大発見」とは。大好評『土偶を読む』、待望の続編!
編集者は同じく江坂祐輔さんなのかな。すでに一度、延期されているみたいだから、わからないかもしれない。6月12日発売。