| すごいトシヨリ散歩 池内紀・川本三郎 毎日新聞出版 2021年10月20日 印刷 2021年11月05日 発行 313頁 |
昔から対談本が好きでした。現代の読者からは、「年寄りによくある、思い出にひたった茶飲み話なんじゃないか」で一刀両断に片付けられそう。
ところがどっこい、このふたり、そんじょそこいらにいるような並の大人じゃありませんよ。「すごいトシヨリ」なんです。とぼけていながら、なんとも魅力ある生き方をしています。とにかく、そんなふたりがよく歩く。健脚です。でも、けっして今はやりのウォーキングなどではありません。あくまでも散歩なんです。
映画だとか本だとか、毎回テーマを決めてはいるものの、どっちへはなしが跳んでしまうかは、そのとき次第。それがまたいい。
で、すべてのはなしに共通しているのが「旅」。それもたいそうなものじゃなく、ちょっとした散歩気分で、東欧の海外へだって。
そうなんです。ふたりともフットワークが軽いのです。よくもまあ、それだけあちこち出かけられたものだと感心するばかり。北海道だったり山陰だったりの小さな駅名を(ふたりのどちらかが)さらっと口にすると、すかさずが駅裏路地には○○があっていい街並みです、と続きます。
微妙にそれぞれの立ち位置が違っていて、こだわるポイントが違うのも面白いところ。初めての土地へ行ったときに、川本さんが必ず戊辰戦争では、どっち方についたのかを確認するとか。それをまた、さらっとながして話題転換する大人池内さん。
身につまされることも多し。
川本さんによる「あとがき」に、2016年3月から2019年9月まで3ヶ月に一度、対談したものをまとめたとありました。その末尾には《池内さんが亡くなられて三年目の夏に 2021年8月》
やはりすでにお亡くなりになった編集長こと嵐山光三郎さんが池内紀さんを評したことばが思い出されます。早起きしてひと仕事かたづけてしまう池内さん。背中のリュック鞄は、ご自分で考案したものではなかったっけ?
そこでも池内さんは、(本書にもありましたが)別荘なんて持つよりも、なじみの家族経営のちいさな宿屋を何軒かがあったほうがいいのだといってました。
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P.145
池内 (前略)冨田均さんという方が一九七〇年代に出した『東京徘徊』(少年社)という本は、荷風が『日和下駄』でつけた目次とほとんど同じなんですね。路地、地図、寺、水とたどりながら、自分が少年時代を過ごした風景を探していくという、独特な作品です。もともと冨田さんが二十代で書いたものですが、少年性と年寄り性が混じった、非常に不思議な本でもある。これは、荷風マニアがやった、一種の究極のかたちではないかと思います。散歩の本を選んだときにそれを使って何かしたかったんですが、「『日和下駄』の後日譚」の後日談になってしまうので、残念ながら見送りました。いい文章ですし、荷風の後日譚とすればよくできているので、いまだに心残りなんですけどね。
ここで冨田均さんの『東京徘徊』(少年社)に出会えるとは思いませんでした。嬉しい限り。この本のこと、すっかり忘れていました。新刊で当時買っています。池内さんと同じく「不思議な本」だなという印象でしたから、なんども引っ越しをかいくぐり、いまだに手放していないはず。造本が粗く、もったいないと思った記憶あり。
ここで池内さんが《散歩の本を選んだときに》は
散歩本を散歩する
池内紀
交通新聞社
2017年6月30日 第1刷発行
207頁
のことでしょうか。これまた忘れられない好きな一冊です。
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