本の雑誌2019年12 号 特集=アンソロジストを目指せ!

特集「アンソロジストを目指せ!」の巻頭記事、

P12~
●アンソロジスト対談
発掘の面白さと布教活動が醍醐味だ!
=日下三蔵・藤原編集室

先日、読んだ『本棚探偵最後の挨拶』(喜国雅彦著、講談社)に出てきた「日下三蔵」さんが冒頭から登場している。アンソロジストの大家! 対談相手である「藤原編集室」さんというかたは存じ上げていなかった。ネット検索すると「本棚の中の骸骨」なるサイトがあった。すごい。

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続けて特集記事の2本目、

P18
●東雅夫インタビュー
原稿用紙千枚の註を受けてみろ!
=聞き手・牧原勝志

の冒頭に、またまた日下三蔵さんについて触れていた。

P18
 子どものころ、地元、横須賀の衣笠商店街には、大きめの書店が一件と、小さい書店が三軒くらいあって、(略) 日下三蔵氏もこの商店街の書店を定期巡回していたとか(笑)。

やっぱり。前述の『本棚探偵最後の挨拶』に、喜国さんが日下邸の蔵書整理に車で出向くとき、渋滞を避けるため朝早く出発し、南に向かって数時間も運転するというところがあった。おそらく神奈川県の南部あたりなのだろうと想像していたのが当たったようだ。

ここのタイトルにある「原稿用紙千枚の註」というのは、『《文豪ノ怪談ジュニア・セレクション》第一期五巻』(汐文社)を編集したときのことだという。

十代の読者を想定したシリーズのため、語註に欲張ったところ、「第一期の五冊は註だけで原稿用紙千枚を超えてしま」ったのだそうだ。結果、よかったとも。

P20
文章を読むのもトレーニングで、わかりやすい文章ばかり読んでいると、読解力がつかない。トレーニングには長い歴史の中で残ってきた文豪の文章が最適ですからね。

十代だけに言えることではない。

アンソロジストとして、好きなアンソロジストやアンソロジーは? という質問に答えて、日下三蔵さんを一番に、加えて北村薫さんを次に挙げている。

P21
詩歌を含めた文学全般にわたる博識と、実践を踏まえた愛のある鑑賞姿勢は、アンソロジストとして理想的ですね。

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P26
私の夢のアンソロジー!

からは、3本目の記事 池内紀「二列目の人生」を偲ぶアンソロジー ●神谷竜介 がよかった。きちんと出典も明記してある。

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P62
謎だらけの『黄金の国を求めて』
●坂上友紀
本は人生のおやつです!!

『黄金の国を求めて』(気谷誠著、指月社刊)の紹介。この本がすごい。著者である気谷誠さんについてネット検索すると、簡単な紹介が見つかった。リンク、こちら

このサイト、Enpedia というのも不思議なサイトだ。

坂上さんの記述によれば

P62
稀代の愛書家として知る人ぞ知る、(略) 『季刊銀花』や『芸術新潮』にも寄稿されたり、ベル・エポック時代の豪華本などの集められていた方

前述のサイトによれば 筑波大学附属図書館に勤め、情報管理課洋書係長 とあった。2008年に55歳で亡くなっている。

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P94~ 「坪内祐三の読書日記」で狩撫麻礼の追悼本『漫画原作者狩撫麻礼1979~2018』(双葉社)に触れている。狩撫麻礼さんについて、どこかで目にした記憶があった。WikiPediaを読んでいて気がついた。関川夏央さんも漫画原作者だった時代があったことを思い出す。

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P96~
連続的SF話●427
シャロンテートの写真
●鏡明

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」について。公開されて、あちこちで記事を目にする。この映画、見たいとは思わないが。これが話題になっていたんだということを知る。蟄居しているとこういうこともある。

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P124~
●神保町物語
万年筆に酔いしれて
=沢野ひとし

今月は「万年筆」について。神保町にある万年筆専門店「金ペン堂」から書き起こし、その後、出会った万年筆についての紹介が続く。どうも、ネタの扱い方が、昔のラジオ番組「小沢昭一の小沢昭一的こころ」みたいになってきた。

万年筆の紹介というよりも、むしろ散財の様子が続く。おなじみの無駄使いのひとつに見えてくるとにかく。高価な舶来ものをじゃんじゃん買っている。本数が多いのだ。ここに書いてあるだけで、総額はいったいいくらになるのやら。

このシリーズのテーマは、もしかすると「沢野の無駄使い」だったのかもしれない。