BOOK BAR/お好みの本、あります。 杏&大倉眞一郎 新潮社 2018年02月25日 発行 237頁 再読 |
何を読んだらいいのか迷ったなら、本書で取り上げた50冊のなかから選べばいいのではないか。ここで取り上げている本は実に幅広いジャンルだ。小説から数学の素数を扱ったものから絵本まで、多岐にわたっている。二人の会話が軽快で読みやすい。取り上げた本についてのページ数もコンパクトに編集してある。1ページ目から通読する必要もない。パラッと開いたところから読み出してかまわない。
出版社サイトに目次が掲載されている。リンク、こちら。
巻末に2008~2017年 紹介書リストが掲載されている。これだけでも十分におもしろい。
FM放送のJ-WAVEで2008年4月5日~2019年3月30日まで放送した番組の10周年記念として出版された本。番組は大倉眞一郎と杏の「本から始まる四方山話」、書評ではないという。放送時間は54分間、それが11年も続き、この春に終了していた。紹介した本は1000冊を超えたという。残念ながら、ちっとも知らなかった。
本に収められているのは二人のやりとり(クロストークと表記があった)なので、おおよその雰囲気は伝わってくる。あくまでもネタバレはなく、取り上げている本から話題が離れていくこともある。それはそれでおもしろい。
掲載されている放送が始まった頃の雰囲気よりも、年数が経ったほうが内容がいい。かたさ、緊張感が取れてきたというか。
感心したのは、初期から内容が濃いこと。杏さんの語彙、言い回し、関心の範囲がしっかりしていた。相手は自分の倍以上の年齢なのだ。それまでに読んできた冊数も違う。それなのに無理しているようでもなく、本書のいう「クロストーク」が交わされている。
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【読んで見たくなった本】
P61
『幻影の書』ポール・オースター/新潮社
何しろ表題が「読んでいなかったのは犯罪級! 圧巻のストーリー」だそうですから。
P72
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ/早川書房
放送は2010年4月3日、まだ映画化もドラマ化もない時期だった。
P107
『ホテル・ニューハンプシャー』ジョン・アービング/新潮社
映画は見たが、未読だった。この紹介で読みたくなった。
P110
『ピダハン「言語本能」を超える文化と世界観』ダニエル・L・エヴェレット/みすず書房
ドキュメンタリー番組でも取り上げていた。既読だったような気がする。
P116
『「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」 ベトナム帰還兵が語る「ほんとうの戦争」』アレン・ネルソン/講談社
TV番組で見たような気がするのは記憶違いか
P123
『空白を満たしなさい』平野啓一郎/講談社
P128
『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと千石南部ソマリア』高野秀行/本の雑誌社
以前、いろいろな書評で取り上げられていた。未読
P144
『素数の音楽』マーカス・デュ・ソートイ/新潮社
これもTV番組で見たような話。
P153
『夜は終わらない』星野智幸/講談社
表題「日本のマジックリアリズム! 引き込まれて抜け出せない」
P168
『太陽・惑星』上田岳弘/新潮社
二人の会話から小説が読みたくなった。
P189
『かえりみち』森洋子/トランスビュー
表題「記憶のドアを開いて。50年前の自分に出会える本」
絵本。主人公の女の子が小学校からの帰り道、二つずつ絵が描かれている。ひとつは現実世界と思われる絵、もうひとつは女の子にはこう見えているかもしれないという絵になっている。これって、ユクスキュル、クリサートの『生物から見た世界』と同じではないのか。女の子帰り道にはジャングルが見えているかもしれない。
おやっと思ったところとして
P190
杏 こういう、割れたガラスの瓶のかけらが落ちているだけでも、それが宝石になったりするような感覚って小学3年生ぐらいまでですよね。
そうなのか。男の子は、もっとあとまでかと思っていたが。
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