[NO.1309] 読書脳/ぼくの深読み300冊の記録

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読書脳/ぼくの深読み300冊の記録
立花隆
文藝春秋
2013年12月10日 第1刷

早いもので、シリーズの4冊目。どれも面白かった。もちろん今回も。

p7 まえがき から

「私の読書日記」から生まれた本は、『ぼくはこんな本を読んできた 立花式読書論、読書術、書斎論』『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』(ともに文春文庫)『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』(文藝春秋刊)に次いで、これで四冊目になる。

以下、抜粋集。

p40 読書の未来

石田 先ほどのディープ・リーディングにもつながるお話だと思いますね。いま、インターネットの社会では、いろいろなものを共有していこう、プライベートな情報もオープンにしていこうという流れが強くなってきていますが、読書とは、本来、閉じた行為である、と。 立花 読書の核心は、著者と自分との文字を通じた対話にありますよね。そこに本を読む快楽があると思うんです。その快楽は極めて個人的で、他人の容喙(ようかい)を許さない感性世界の中で生まれる。

p116

つい先だって、東京国際フォーラムで自然科学研究機構主催の「解き明かされる脳の不思議・脳科学の未来」と題する一大シンポジウムが開かれた。私はこのシンポジウムのプログラムコーディネータをつとめ、当日は総合司会として午前十時から午後六時まで働きづめだった。クタクタになったが、これは実に知的刺激に満ちあふれた面白いシンポジウムだった。 冒頭イントロダクションとして登場した長山國昭・生理学研究所教授が、「科学の終焉と脳科学の未来」というタイトルで講演した。これが恐ろしいほどに過激で大胆な主張だった。氏によると、「①物理学はすでに終焉した。②生命科学は近未来に終焉することがもう明らか。③残る学問は脳世界だけ」なのだという。脳科学の持つ情報量はほぼ無限大だから、近未来の学問世界は当分脳科学中心にまわっていくという。文化系の学問も、もろもろのカルチャーもやがて脳科学に呑みこまれていくのは必定だという。

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石浦章一・黒田玲子・山科直子編『脳と心はどこまで科学でわかるか』(南山堂 1800円+税)

ジョー・マーチャント『アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ』(文藝春秋 1900円+税)

山下紘一郎『神樹と巫女と天皇』 (梟社 2600円+税) 大正四年、即位したばかりの大正天皇がとりおこなった大嘗祭に事務官として参与した貴族院書記官長柳田国男がその前後に書いた一連の文章と発言記録を読み解いていくことで、柳田のユニークな天皇起源説に迫っていく。

アーサー・I・ミラー『ブラックホールを見つけた男』(草思社 2500円+税) エディントンのこの偏見のために、天体物理学は四十年近く停滞した。

藤森照信『21世紀建築魂 はじまりを予兆する、6の対話』(INAX出版 2100円+税) このような新しい流れを建築史的に分析してみると何がいえるか。二十世紀建築は「生命にはじまり、数学に行きついた」とする藤森の建築史論が面白い。一つは、アール・ヌーヴォーからガウディにいたる生命現象にインスピレーションの種を求める流れ。もう一つはアール・デコからドイツ表現派にいたる鉱物結晶的造形の流れ。その向こうには数学的抽象性を求めるバウハウスの立体幾何学的直感がある。二十世紀建築は生命、鉱物、数学の三層構造に行きついたが、その極限まで行きついたところで今度は数学の層から生命の層へのUターンが始まった。それが、二十世紀の新しい流れではないかという。

狩野博幸・湯本豪一『日本の図像......神獣霊獣』(ピエ・ブックス 3800円+税)

永井伸八郎『平成版 江戸名所図絵』(日貿出版社 2800円+税)

ロミ『[完全版]突飛なるものの歴史』(平凡社 2800円+税) それより驚きなのは、あの澁澤龍彦の作品の中に、ロミのこの本を下敷きにしたものが沢山あり、なかには下敷きというよりほとんど丸写しとしかいいようがない部分が幾つもあるという事実だ。 「人類の進化は過去一万年に緩慢になった、あるいは停止した」と考えるのが、これまでの進化論者の標準的な考え方だった。つまり現代人も原始人もその肉体と頭脳はほぼ同じと考えるわけだ。 これに対して真っ向から異をとなえるのがグレゴリー・コクラン、ヘンリー・ハーペンディング『一万年の進化爆発』(日経BP社 2200円+税)だ。 途中略 最も驚くべきことの一つは、絶滅したと思われているネアンデルタール人の遺伝子が、彼らと我々現生人類があるとき混在していた(一部の個体が性的交渉を持った)ため我々の体内にも移入してきたということ。ヨーロッパ人の場合、平均的に遺伝的変異の五%は、ネアンデルタール人ら旧人類由来のものといわれる。生物の歴史は遺伝子混交歴史であり、遺伝子混交を積み重ねることで、環境変化に適応度が高くなった者だけが生き残ってきた(結果的に勝ち残った者がいろんな遺伝子のいい所どりをしてきた)というのが進化の歴史なのだ。

フィリップ・ステッドマン『フェルメールのカメラ』(新曜社 3200円+税)

石飛幸三『口から食べられなくなったらどうしますか 「平穏死」のすすめ』(講談社1400円+税)