『百科全書』と世界図絵 鷲見洋一 岩波書店 2009年11月26日 第1刷発行 |
それにしても岩波のこの手の本は値段が高い。298ページ(別に巻末文献表が19ページ)で3800円也。これはまだ安い方でしょう。いったい何部を刷ったのか。
著者67歳にして最初の論文集なのだといいます。あとがきにもご自分で書かれていますが、これがいわゆる論文集かと思いきや、意外にも随筆の趣きが深いのです。
至るところに思い出話が詰まっていて、そこからいきなりヨーロッパ絵画へと話が飛んだりするので、読み始めには驚きました。たとえ体裁はそうであっても、普通の学術書ではありません。読書するには面白い。
それにしても、『百科全書』を編んだ人々にとってのパラダイムというか、暗黙のうちに前提としていた観点(常識)というものを現代と比較すると、その違いには驚きました。それを著者は執拗に、(著者の言葉を借りれば)「コツコツ」と記述していくのです。
その具体例の豊富なことといったら。あるいは、彼ら(編者)たちの考えでは当たり前であった例として、項目立てが挙げられています。今の常識では考えられないような事項が隣り合わせになっている。しかし、それが彼らにとっては至極当然なことであったといいます。
なるほどとしかいいようがない。スリリングでもある。
具体例をひとつずつ抜粋、挙げていくと、きりがなくなってしまいそう。今回は抜き出しも一切なしにすることに。
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