工学部・水柿助教授の逡巡 森博嗣 幻冬舎 2004年12月20日 第1刷発行 |
このシリーズ2作目。おやっと思ったのは印税のこと。土地の購入代金が億単位だというのは本当でしょうか。すごいなあ。
小説家デビューの顛末について著者曰く、「人生の分水嶺」と表現していましたが、確かに、収入がそれだけ増えてしまっては生活が変わったのでしょう。デビュー後、3年と記述されていましたが、その時点で森氏は何歳だったのでしょうか。1990年代後半ですから、まだ30代。大学を辞めたのは2005年3月とのこと。デビューが1996年だから9年間は両方の仕事をしていたのですね。長い。
久々の抜粋。
p53
そのとき、水柿君はなんと五万八千円もする椅子を買おうと思った。
小説をこれから書こうと思ったときの出来事です。先行投資。やっぱり椅子は大切ですよね。
p90
(プラモデルのマニアについての記述の中で)とにかく想像を絶する量になる。筋金入りのマニアは、同じキットを同時に三箱購入するのが一般的だ。一つは作るために、二つ目は保存用、三つ目は改造あるいはパーツ取りのためである。
うーむ、ミニカー愛好者がやはり三つ買うというのは聞いたことがありますが。ちなみに三つの用途は、自分で遊ぶためと保管用と交換用なのだとか。
p91
(前記のプラモマニアの続きとして)水柿君の友人には、購入したプラモデルの箱が自宅に入り切らなくなって、新しくアパートを借りた奴がいる。そこを借りたおかげで、ますます購入スピードが増した。彼の計算によると、自分が買ったキットを全部組み立てるには、五百年以上かかるというのだ。
いるのですねえ、やはり。古書の買いすぎで部屋を借りるというのは、何度も読んだことがありましたが、プラモでも同じだったとは。しかも、作りきれないだけの量を買ってしまうというのも似ています。古書マニアだって、読み切れるはずもないのですから。
p209
学会などの論文発表でも,OHPをみんなが使っている。あらかじめ論文はすべて印刷されて、その冊子を全員が持っているにもかかわらず、例外なくOHPを使うのだ。だから、話をするときには、常にOHPがなくてはならない、という条件反射ができてしまう。結婚式でスピーチするときにもOHPが使えたら非常に便利だ、と常々水柿君は考えていた。実際に、研究者仲間の結婚披露宴になると、OHPを使ってスピーチをする人がいる。研究者とは、そういう人種なのだ。
脱帽。
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