[NO.823] 読書という迷宮

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読書という迷宮
齋藤愼爾
小学館
2002年1月1日 初版第1刷発行

 初出は『出版ニュース』(出版ニュース社)1990年1月下旬号~2001年5月上旬号。懐かしい書名が並んでいるので手にした本。中島らも氏の『今夜、すべてのバーで』は1991年6月上旬号に掲載。橋本治氏『窯変 源氏物語』も同じく1991年8月上旬号。ともに18年も昔になってしまったことに愕然。鹿島茂氏の『子供より古書が大事と思いたい』で1996年5月号上旬号。それでも12年前ですか。

 巻末には丁寧な初出一覧と索引。著者は深夜叢書社設立、編集者。面白い書評集でした。

 なんといっても山尾悠子氏の名前を見つけたときには驚きました。何かの間違いではないかと。しかし『山尾悠子作品集成』(国書刊行会)とあります。内容はというと、これが刊行祝賀会でのスピーチであるという。そのスピーチの内容がまた、贅沢な話。うなるしかありませんでした。

 たしか、卒業後には故郷のテレビ局へお勤めではなかったでしょうか。20年ぶり。


p134
昭和文芸院瑣末記/凜列たる明治文人の気骨を描く
和田利夫 著

p153
ラ・フランス/多田道太郎著作集 第一巻/俗に遊ぶ九〇年代の花田清輝ならむか
多田道太郎 著
著作集の全巻にわたり「解説対談」役を務めている加藤典洋(のりひろ)氏も、「井伏鱒二は俗に遊ぶ鴎外といわれるが、ことによると多田道太郎は俗に遊ぶ九〇年代の花田清輝かもしれない」といっていて、私は私の直感もまんざらじゃないなと思った次第だ。『ラ・フランス』の最初の六つの論考、「宣伝の人ルソー」「フランス革命下のコミュニケイション」「大革命の祭典」「乗合馬車の思想」など、『復興期の精神』に入っていても不思議ではない。ことに「宣伝人のルソー」など、一九五一年六月「ルソー研究」(岩波書店)に発表されたものだ。多田氏が二七歳の時の執筆による。『復興期の精神』(一九四六年)から五年ほどしか隔たっていないし、花田の三十七歳に比べても若い。

p171
ゴムの惑星/誰もがかつて天文少年、少女であった
赤瀬川源平 著
 柴田翔(しょう)氏の短編「ロクタル管の話」(『文學界』昭和三十五年一〇月)を読んだとき、あっ、新発田市も子供の頃、「子供の科学」を読んで育ったにちがいないと思った。

p284
昭和時代回想/「団塊の世代」の真摯な肉声
関川夏央 著

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