[NO.761] 文人の流儀/ランティエ叢書4

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文人の流儀/ランティエ叢書4
井伏鱒二
角川春樹事務所
1997年9月18日 第1刷発行

 面白い構成。5つの章立てになっており、その中、さらに個々の文章。目次には、どういうわけか総ルビ。変なの。
1 厄除け詩篇
2 文人杖 「奥の細道」の杖の跡
3 棋力
4 釣師と釣場
5 無聊庵日乗

 印象に残ったもの。「棋力」からは最後の南豆荘の将棋盤」。大水が出て、同じ宿に泊まっていた亀井勝一郎、太宰治夫婦の慌てぶりが描写されており、その様子がなんともはや。昭和15年のこと。

 「無聊庵日乗」は、どれも捨て難し。「コンプラ醤油瓶」は、お宝探偵団じゃないけれど、現在珍しがられているコンプラ瓶を、釉薬(うわぐすり)もお粗末で、轆轤(ろくろ)を乱暴にまわしたらしいあとが目立っている。輸出品となると、昔の人もやはり粗製濫造したのだろうか。と評し、可笑しくなります。
 次の「かみなり」では、内田百閒氏が雷を異様に恐れた様子を紹介。変。井伏氏が田舎へ釣りにいったとき、雷が松の木に落ち、見に行くと、根元のところに穴があいており、どのくらい深いのかを確かめるため、釣り竿を入れたという話。それを聞いた内田氏いわく、
「いけません、いえ、そんなことをしてはいけません。」
 と、小声だが厳しく云った。