随想 ドストエフスキー 小沼文彦 近代文芸社 1997年5月20日 第1刷 |
論文集ではない、軽いエッセイとして読める内容。各文章末尾に書かれた年が記述されているものの、初出の掲載はありませんでした。
前半部、我が国への受容史が面白く読めました。有名な内田魯庵による翻訳の話から始まって、戦後「近代文学」派から椎名麟三氏、埴谷雄高氏にまで言及します。そういえば、『悲劇の哲学』シェストフなど忘れていました。
p43
昭和前期は「シェストフ的不安」のうちに終わりをつげ、小林秀雄の『ドストエフスキーの生活』(昭十・一~昭十二・三)の登場によって新しい時代を迎えることになる。
著者の留学時代から得た知識や経験は、具体的なだけに面白い。1963年に書かれた文章から80年代までの幅があります。最期の章、「奇縁」ではドストエフスキーのお孫さん、「ステッセルの孫」では文字通りのお孫さん、それぞれを名乗る人物へ「奉賀金」を献上した! というのは、なんともやは。
目次
Ⅰ
一 ドストエフスキーの移入、その受容のいきさつ
二 人道主義的受容の時代
Ⅱ
一 ドストエフスキーのペテルブルク――旧居の今昔
二 モスクワ文学散歩
Ⅲ
一 ドストエフスキーの『大審問官』
二 透徹した予言者の眼
三 パスカルとドストエフスキー
四 世界の名作『罪と罰』
五 貧乏と借金の落とし子『罪と罰』
六 ドストエフスキー読書案内
七 ドストエフスキーの自画像――わたしという人間
Ⅳ
一 ドストエフスキーへの道
二 奇縁
三 ステッセルの孫
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