[NO.660] 偉大なる暗闇/師 岩本禎と弟子たち

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偉大なる暗闇/師 岩本禎と弟子たち
高橋英夫
新潮社
1984年4月20日 印刷
1984年4月25日 発行

 これまでなかなか読めずに時間ばかり経ってしまいました。出版から既に24年、やっと読めました。じっくり読めてよかったです。

 まだ、インターネットが普及する前のこと。神保町の三省堂だったか、新宿の紀伊国屋だったかで、本書を買おうとすると、すでに絶版で入手はできませんと告げられ、しょんぼりしたことがありました。今なら、ネットで簡単に調べられ、古本でも入手しやすいのに、当時はあきらめるか、足で古書店を回って探すかしか、手段がありませんでした。

 そのときに調べてくれた店員さんが、こちらのため息をついたか、がっかりした様子にだったか、とにかく気の毒そうな様子を見せてくれたことを鮮明に覚えています。よほど本好きな客と思ってくれたかもしれません。それだけこの本には思い入れがありました。働き出してからでも、学校を出たてのころは「探書手帳」のようなものを付けていましたが、仕事が忙しくなるにつれて、そんなものを携えて古書店巡りを続けるほどの時間はとれなくなりました。今から思えば、就職あるあるです。そんなときに新刊で出たのが本書でした。いくつかの書評にも取り上げられ、話題になりました。ところがこれが置いてある規模の書店に出向く時間がとれません。「探書手帳」に書評のきれっぱしをはさんでいたかもしれません。その切り抜きがぼろぼろになったころ、やっと時間がとれて出かけた大型書店が、新宿紀伊国屋書店だったか、三省堂お茶の水店だったのです。がっかりした理由でした。今ならネットで簡単に古本であっても入手できます。思い入れのある本も少なくなりました。

 ◆ ◆ 

 執筆時にはまだ、岩本先生の死を看取ったという親族に話を聞くことが可能だったのですねえ。