[NO.654] 人生の秋は美しい

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人生の秋は美しい
野田正彰
三五館
1997年8月25日 初版発行

 初出は1990年2月~92年3月まで毎日曜日、「日本経済新聞」に連載した中年に関するコラム。それを『中年の発見』(1994年3月、新潮社刊)として出版し、今回、タイトルをかえて再出版したのだそうです。

 『中年の発見』というタイトルについて、「あとがきに代えて」の中でまとめているので引用します。

 中年という人生のステージが、多くの人々に意識されるようになったのは、実は近年のことである。これまでは、むしろ壮年と呼ばれ、働き盛りの三十歳代の男性をイメージしていた。女性については、年増とか年配の女性という表現はされても、はっきりした言葉はなかった。いずれにせよ、少年期、青年期、壮年期と経てきて、老年期に入るまでの二〇年近くの歳月が、ひとつの安定したまとまりとして社会的に意識されるようになった。
 人生のステージは、文明の推移とともに発見されている。フランスの歴史学者アリエスは『(子供)の誕生』(杉山光信・杉山恵美子訳、みすず書房)で、小さな大人としてではなく、子供時代が一般に認められるようになったのは十七、八世紀になってからのことと述べている。青年期の登場も、十九世紀になってからのこと。二〇世紀末になって、ようやく私たちは「中年の発見」に至ったのである。
 日本では、一九七〇年代後半から高齢化社会の到来が強調されてきた。すべての人がやがて老人性痴呆になるように言われ、年金も出なくなると、不安を煽る論説が横行した。だが、人は老人になる前に、永い中年期を生きるのを忘れていた。
以下略

 アリエス『(子供)の誕生』は出版時に衝撃的で、あわてて購入した記憶があります。中年の発見は二十世紀末なのですか。なんともはや。
 原則、見開き1ページの読み切り内容。きわめて読みやすい体裁です。